『レモネンドォル』


童話。

歌詞

「報われないな」と
人形を相手に愚痴る
「無垢は偉いな」と
人間を相手に褒める

突拍子のない
言葉を投げかけてくれる
レモネンドォルに
今日もまた慰められる

ふざけて
後ろめたく
なるような
素振り見せる

それでも
お構いなし
何かが
気になっている

お湯をかけると
形が変わるのが特徴
サワーを見ると
入りたくなるのが欠点

大体手のひらの上で
片足立ちを続けてる
「バランスが良いと
ラフランスに似てお似合い?」
「うん。お似合いだよ」
満足げに指を回す
気が済んだようで
箱の中へ戻っていた

知らずに
閉じ込めたら
隙間で
くつろいでた

どうやら
少しくらい
なくても
いいらしいや

酸いも甘いも
捏ねてしまえばいいじゃないか
粘土が苦いことが
変わることはないから

寒いと布団の中から
出ることができないらしい
ドライヤーを見せ
恐怖で出て行かせてみる

デザインの凝った
包装紙で服を作る
その上からまた
粘土を塗りたくってゆく

窓からムクドリを眺め
なぜか同類だと思う
畳の上では
絶対摺足で歩く

ところてんだけを
目の敵として見ている
一秒間だけ
全身を黄色にできる

「もうすぐ見えなくなるよ」と
唐突に告げられた夜
冗談と思い
まともに取り合わず眠る

目覚めたときには
何も残っていなかった
喪失感だけ
そこにしばらく留まった

あれからどれだけの時間が
経過したことだろうか
あれ以来それが
現れることはなかった

「はてさて困った」
とりあえず呟くものの
それほど困って
いないことに気づいていた

レモンの飾られた部屋で
粘土を捏ねている姿
人形が徐々に
また形作られてゆく

「レモネンドォル?」と
問う言葉には答えない
突拍子のない答えがまだ
思い浮かばないから

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